「流れ星見に行かない?」

こんな時間に外出のお誘いをしたら怒られちゃうかな。でも、千空なら「息抜き程度なら付き合ってやるよ」とかなんとか言って出て来てくれるんだろう。
お優しい幼馴染み様に長年甘えまくってる私が言うんだから間違いない!

「……ほら、やっぱりね」
「あ?なんか言ったか」

私の予想は的中。
コートにマフラー。防寒態勢を整えて現れた千空を見て、心の中でガッツポーズ。

「いえいえなにも。あー寒い!ね!」
「声がでけえんだよ」

呆れを隠そうともしない千空の言葉に、慌てて口を塞ぐ。
千空と夜にデートできるからって浮かれてしまった。彼にそんな気なんて更々ないのは百も承知だけれど。
こうやって二人で夜空を見上げてる瞬間にこそ流れ星を見つけられたら良いのに。

「上ばっか見てると転けるぞ」
「大丈夫大丈夫、毎日練習してるから」
「逆に危険だろそれ」

しばらく歩いていると目が慣れてきて、夜空に点々と星が浮かんでくるように見える。
寒いせいか口数の少ない千空に呼び掛けると、ぶっきらぼうな声が返ってきた。

「ねえオリオン座の……あの真ん中の3つの星の下にさ、実はいっぱい星があるよね?」
「M42、43。オリオン座大星雲な」

さすが千空先生、即答だ。
周りが明るいから今まであまり分からなかったけれど、こうして目を凝らしてみると色々な物が見えてくる。それはきっと星に限らず、だ。

「千空はなんでも知ってるなぁ」
「いーや?知りてえ事ばっかだわ。まぁでもあれはなんだこれはなんだって聞いてくるヤツが真横にいっからな、多少は詳しくもなんだろ」
「えー私のせい?」
「そこは前向きに捉えとけ」

じゃあ私のおかげってことで……って、それ、私の質問に答えられるよう予習してる部分が1ミリくらいはあるってこと?
そんなまさか。でも嬉しい。
もともと知りたがりの千空に私がなんでも聞いちゃうから私の知識も千空の知識も増えるばかり。これはとっても良いことに違いない。

「オラ着いたぞ。どうせここの肉まんが目当てだろ」
「おっちょうど良いところにコンビニが〜って千空……」

これじゃ私が食い意地張ってるみたいだ。
間違ってないのが悔しいけれど、ここまで付き合ってくれた彼にも温かい食べ物を分けてあげよう。
千空と見る星空は一人で見上げるよりずっと綺麗だし、千空と半分こした肉まんは一人で食べるより何倍も美味しいから。



2020.12.13


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